だいじゃのはら

むかしむかしのそのまたむかし、そのまたずうとむかしのことじゃ。おおいわやまにはだいじゃがおってな、里におりてはこどもをまるのみしよる。
そらおおきいへびじゃ、こどもたちはこやつににらまれたらさいご、ひとのみではらの中じゃ。
里の者はだれもが気が気じゃない。自分とこに子供がおるうちならもういてもたってもおられはせん。
こんなだいじゃはなんとかせんといかんとはだれもが思うとったが、みんなこわかった。手も足も出なんだのじゃ。
そろそろあやつが里におりてきそうなころ。どの家もしめきって、ねらわれんようにしとる。
「おうい。はらへったぞ。こどもをくわせろよ。うまいこがいいぞ」
だいじゃのこえがきこえた。もうだめじゃ。またどっかのこどもがかわいそうに、ひとのみされるのじゃろう。
「どこのこがうまいかのう。おしえろよ。おしえろよ」
だいじゃはそういいながら、はなをくんくんいわせとる。
「おう、すごくうまそうなにおいじゃ。きめた、きょうのごちそうだぞ」
とうとうやつはいっけんの家を見つけた。そして、その家にはいっていったな。
「このにおいのもとはだれじゃ」
この家の中になんなくはいり、ずうずうしいにもほどがある。口をあんぐりあけとる。そして、ひゅうと大きい力ですいこみはじめた。かわいそうにひとり、このにくにくしいだいじゃのはらの中にはいっていった。
「わおわお、なあんかきょうはおかしいぞ。どうしたじゃろ。どうしたじゃろう」
だいじゃはたいそう苦しみだした。
「はらがいたいよ。いたいよいたいよ。いとうてたまらんぞうい」
だいじゃはそこいらでのたうちまわった。あまりのいたさにこらえられんでおるんじゃ。ここはだいじゃのはらの中。
「うめえなうめえな。おおいわやまのだいじゃのはらは、どんだけうめえんだろ」
だいじゃのいぶくろはむしゃむしゃと食われとった。
「うめえうめえ。天下一じゃ。礼をいわなあかんな礼を」
そういうと、だいじゃのはらをやぶってこやつは外にでてきおった。
「おい、おおいわやまのだいじゃよ、おぬしのはらは、いまいもんじゃのう」
だいじゃはいたいのをとおりこして、もはやしゃべることもできん。声にならん声をしぼりだすようにいうた。
「おぬしはだれじゃ」
するとこやつは、げっぷをしながら、
「わしゃ、がきとしにがみのあいのこじゃ。よろしゅうにのう」
という。だいじゃはこのとき、力つきてしもうた。
「これこれ、まだわしゃおぬしにまんぞくに礼をいうとらんぞ。きけきけ、礼をきけよ」
でもだいじゃはもうぴくりともせん。がきとしにがみのあいのこは、だいじゃのなきがらに、情のないやつじゃのう、というて去っていったな。
おしまいじゃ。
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