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銀の馬車

 

 

星めぐりの銀の馬車ははじめての星におりたちました。

「ここで休ませてもらっていいかな」

馬方の純作がたずねますと、この星は、

「ぼくみたいな星によく来てくれたね。どうもありがとう」

と、心からうれしいようすを見せていました。この星はいいました。

「ぼくなんて、まっ白でちっともきれいじゃないし、肌もこんなにでこぼこだから、ほかの星たちにいつもばかにされるんだ。だれひとり立ち寄ってもくれないし、寂しいものだよ」

「ちょっと失礼させてもらうよ」

 純作はまるく出っぱった地面肌をいすがわりにしました。

「どっこいしょ・・・。そうかな、きみがいうほどじゃないよ。むしろきみほどまっ白な星なんてそうはないし、とってもきれいだと思うけどなあ」

 白い星はいいました。

「ぼく生まれてはじめてこんなにうれしいことをいってもらったよ。ありがとう」

 とつぜん地面がぶるぶるとゆれだしました。

「おいおい、ないているのかい」

 あわてて純作がいうと、白い星は、

「ごめん・・・。でもぼくうれしくって」

といいました。あたりには霧のような、しおっからい雨がふりだしていました。

 純作の銀の馬車のきょうのお客さんは、人のよい新婚さんでした。だんなさんは、

「うん、いい星だいい星だ」

と、くびをこっくりと上げ下げしていいます。奥さんも、

「そうよ、とってもすてき。すごくきれいなお星さまだわ」

と、しきりにほめています。純作は立ち上がりました。

「ちょっとひとまわりさせてもらっていいかな」

 白い星がいいました。

「うん、いいともいいとも。ぼく、ぼくうれしいよ」

 また地面がゆれていました。

 銀の馬車はしなやかにこの星をかけはじめました。白い星は、遠くに見える星座の説明をしたり、空に広がる星々が一番よく見える場所を教えてくれたりしました。

「うれしいな、うれしいな」

 無邪気な白い星は大よろこびの声をあげています。すると、その時です。

「これは・・・」

純作も新婚のお客さんも、そして銀馬も、目と口を大きくあけたまま動けなくなってしまいました。どうしてかって・・・。あんなにまっ白だった星が、青々とすんだ色にかわっていくではありませんか。それはなんともたとえようのない、まさしく神秘の色でした。背すじがぴんと張りつめるような感動をみんなにあたえていました。

「あれ、ぼくどうしたんだろうな」

 この星自身、なぜこんなふうになったか、まったくふしぎでした。

「きれいだ・・・」

「最高の星よ・・・」

 お客さんはうっとりと、ただうっとりと酔いしれていました。それはそれは美しい星でした。

「ほんとにぼく、どうしたのかな」

 しきりに青い星はふしぎがっています。やがてまた変化がはじまりました。青い星はこんどは、きらきらひかりかがやく黄金の星になりました。

「す、すばらしい」

「なんということでしょう」

 その黄金色はけっしてけばけばしくもなく、みんなやすらかで、やさしい心にしてくれるような微妙で強烈なひかりをはなっていたのです。

 遠くからは、いつもこの星をばかにしていたほかの星たちが、うらやましくてしかたがないというようなまなざしで、こちらを見ているのでした。

銀の馬車はようやく美しいこの星のひとまわりをおわりました。別れぎわに純作が星にいいました。

「きみはほんとうに、とんでもなくすばらしい星なんだよ」

「いや、ぼくなんて。それよりぼくうれしくって・・・。みんながとてもやさしかったから」

 美しい星がそういうと、こんどはお客さんがいいました。

「こんなにきれいなきみは、きみの心そのままの姿だと思う。きみがとってもすなおで、純粋で、あたたかい気持ちをもっている星だからこそ、ほんとうに美しいんじゃないかと・・・」

「ええ、きっとそうだと思うわ・・・」

 そんなやりとりを、ほかの星たちもじっと聞いていました。

 やがて銀馬が声高にいななきました。かぎりなく広がる空に散らばった星たちを背にして、星めぐりの銀の馬車は次の星にむかいました。格別美しい星が青くなったり黄金色になったりして、いつまでもそれを見送っていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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