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森のまつり

 

 

お月さまが、やさしく森をてらしています。たくさんのお星さまたちも静かなこの森に美しい光をとどけています。

 森にはひときわ大きい一本のひのきがあり、この木はふくろうのすまいです。ふくろうは気もちよさそうに唄っています。

 

  ほうほうおどれ まつりだよ                                                                  

  よどおしおどれ えっさらさ

  ほうほう おどれ みなおどれ

  もうすぐまつりだ ほうやれほう

 

 それをきいていたお月さまは、くびをかしげてふくろうにといかけました。

「ふくろうさん、今夜の唄はいつもとはちょっとちがっているようだね」

 すると、ふくろうはお月さまを見あげてこういいました。

「お月さま、五日後に森のまつりをやるんで、こうやって、森のみんなにしらせているんです。にぎやかで、楽しいまつりになりそうなんですよ。そうだ、お月さまもまつりの夜には森におりてきて、わたしたちといっしょに楽しんでください。そうだ、そうしましょう」

 お月さまは、

「それは楽しそうだね、ありがとう。でも、わたしは空から、にぎやかなみんなのようすを見させてもらうことにするよ」

といいました。ふくろうはちょっと残念そうです。

「そうですか。きっとたいへんもりあがると思いますんで、よろしかったらいつでもおりてきてくださいね」

「ああ、どうもありがとう」

 お月さまは、にこやかにそういいました。ふくろうは次に、大きくくびをまわしながら、たくさんのお星さまたちに話しかけました。

「お星さまたちも、ぜひまつりに参加してください。楽しくなると思いますよ」

 お星さまたちは、

「ありがとう」

「それは楽しみなことだね」

などといいました。

 お星さまの中にうまれてまもない星の子がいました。今までの話がわかりません。

「ねえおかあさん、まつりって、なあに」

 星の子は、そばのおかあさん星にたずねました。おかあさん星は、

「まつりっていうのはね、みんなで集まって唄ったりおどったりして楽しむものなのよ」

 そう答えました。

「ふうん」

 星の子は、まつりというものにたいへん興味をもちました。

「ぼくもまつり、やりたいよお」

 星の子がそうつぶやくと、おかあさん星は、

「わたしたちは、この空の上からまつりを見まもってあげなくてはいけないのよ」

といいました。星の子は残念でしたがしかたありません。でも遠い空の上からしか見られなくても、五日後のまつりがまち遠しくてしかたありませんでした。

 

 まつりの二日前にもなると、森の生きものたちは、いそがしそうにじゅんびをはじめました。

 

えっさらやっさら いそげよいそげ

まつりのじゅんびだ いそがしい

えっさらやっさら 力をぬくな

楽しいまつりができなくなるぞ

えっさらやっさら いそげよいそげ

まつりのじゅんびだ いそがしい

 

 あるものは、おどりのやぐらを作り、あるものは、たくさんのちょうちんを作っています。みんなほんとうにいそがしそうです。星の子はじっとそんなようすを見ていました。

 まつりの前の日には、おおむねじゅんびもおわってしまいました。森のみんなは、とてもいきいきとした顔です。

「いよいよあしたがまつりだな」

 星の子は、空からそうつぶやきました。

 夜があけました。きょうもとてもいい天気です。森のまつりは天気の心配なくはじまりそうです。でもまつりは日がくれないとはじまりません。星の子は楽しみにしていたまつりを前に、ぐっすりと眠っていました。

 生きものの中には、昼間眠るものも夜中に眠るものもいますが、この時だけはどんな生きものも、夜どおしのまつりにそなえてみんな眠っていました。草や花や、木々さえもです。

 さてさて、ついに夜がきました。いよいよまつりがはじまろうとしています。もちろんだれもがまつりを楽しみにしていましたが、なかでもいちばんよろこんでいるのは、やっぱり星の子でしょうか。その星の子は、さっきからちょうちんの赤い色にうっとりと見とれています。

「みなさんおまちどおさまでした。ただ今よりひと晩かぎりの森のまつりをはじめます。今夜はごゆっくりと、思いっきり楽しんでください」

  森でいちばんの年よりのきつねがあいさつをすると、みんな大きなはく手をしました。さあいよいよまつりがはじまりました。色とりどりの鳥たちのうた声にあわせて、たぬきがおどりだしました。

 

ぽんぽこぽん

ぽこぺんぽん

ぺこぽこぺんぽこぽん

 

やがて、みんながわになっておどりはじめました。そしてそのわは、次第に大きくなっていきました。

 そのうち、かってにうたいだしたり、話しこんだり、お酒をのんでまっかになったりして、みんなそれぞれに、このまつりにすっかりよいしれていました。

 空の上からずっとそんなようすを見ていた星の子は、とうとうがまんができなくなってしまいました。

「あっ、これこれ、ぼうや、だめよ」

 おかあさん星があわてて止めようとしましたが、星の子は、とうとう森におりてしまいました。

「これはこれは、おぼっちゃん、いらっしゃい」

 案内役のりすがそういいました。星の子はまずいちばんにぎやかな、おどりのわの中にはいり、まわりを見ていっしょうけんめいにおどりはじめました。

「おお、うまいうまい。おぼっちゃん、じょうずだよ」

 おどりなんてはじめてですが、みんなすごくほめてくれました。星の子はますますちょうしにのっておどりつづけました。

 ずっとずっとおどっていましたが、少しつかれてきました。木の下のいすにこしかけていると、森のみんながとぎれるまもなく話しかけてきます。星の子はみんなとすっかりなかよしになりました。今まで味わったことのないゆかいなひとときを森のみんなとすごしました。

 夜の時間ものこり少なくなりました。にぎやかなまつりも、そろそろ終わろうとしています。星の子は大まんぞくでした。おどりはほめられるし、たくさんの友だちもできました。そろそろ空に帰ろうとしました。

ところが、たいへんなことになりました。なんどもなんども空に飛び上がろうとしますが、空までとどかないのです。

見上げるとおかあさん星がないています。それも今なきだしたのではなく、さっきからずっとないているようすです。

「おかあさあん」

星の子も大声でなきだしました。なきながらなんども飛び上がろうとしますが、空にはとどきません。かわいそうな星の子は、それでもくりかえし、おかあさん星のそばまでもどるようこころみました。

森のみんなは話しあいをはじめました。しばらくして話がまとまると、みんないっせいに、まつりに使ったものを取りこわしてしまいました。そしてこんどは何か別のものを作りはじめています。それはおどろくようなはやさでした。

 やがて、へんなきかいができあがりました。それはシーソーのようなものですが、もっと大きくてふくざつなかたちをしています。ふくろうがいいました。

「おぼっちゃん、うまくいくかどうかわかりませんけど、このきかいで空までもどしてさしあげたいんですが、いいですか」

 星の子はなみだをふきながらいいました。

「空までとばしてくれるの・・・」

「うまくいけばいいんですがね」

 さっそく星の子を発射台にのせました。

「ちょっぴいたいですけど、がまんしてくださいよ」

「うん」

「ご−う、よーん、さーん、にーい、いーち・・・」

 だれもが心配そうに発射台を見ています。

「はっしゃあ」

 どどんという音とともに、星の子はいきおいよく空に上がっていきました。

「うまくいった」

 星の子はみごとにおかあさん星のとなりに帰ることができました。おかあさん星のなみだは安心とよろこびのなみだにかわりました。

「おかあさん、ごめんなさい」

そして星の子は下をむいて、

「森のみなさん、ほんとうに、ほんとうにありがとうございました」

といいました。

「よかったですね」

「ほんとうに、よかったよかった」

 森のみんなは手をたたいてよろこんでいました。星の子のなみだが雨になってみんなをぬらしました。それはたちまち黄金色にかわっていきました。

「すてきなまつり、どうもありがとう」

「いいえ、こちらこそ。思い出深いまつりの日になりました。おぼっちゃん、ありがとう」

 長い一夜のおわりをつげるように、お日さまが東のほうから顔をのぞかせはじめました。

 

 

 

 

 

 

 

 

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