ガッカリ村へは行くもんじゃない。一度行ったらおしまいじゃ。ためしに行ってみるか?これこれ、うなずいたりするな。ガッカリ村に行くとな、そりゃあおそろしい目にあうんじゃて。どんな目かと?そうじゃな。ちょっとだけ話して聞かそう。 ガッカリ村のことはそのときゃあまだ知られていなかった。ジンベという名の男がある日まぎれこんだことから話ははじまるんじゃ。ジンベは毎日畑ではたらいとったが、その日はすっかり日がくれてしまった。九月のことだったらしい。
畑と家とははなれていた。てくてくと、いつもの道をつかれた足で歩いていたんじゃと。いつもはより道など、することもないし、とちゅうで休むこともない。
じゃが、この日はとにかくつかれておった。たまらず、道のわきにあった大きな石の上にすわり、なんとねむりこけてしまった。
ひんやりとした風に顔をなぜられ、ジンベは目をさました。すると、目の前がわかれ道になっていた。ジンベは頭をひねった。
「こんな道じゃったかな。へんじゃなあ」
暗くてはっきりとは見えなかったが、立てふだには、「右・ジンベのいえ、左・ガッカリ村」と書いてあった。
「ガッカリ村?聞いたこともないな」
ジンベは左がわの道、ガッカリ村と書かれた方向へ歩きだした。
道はまっ暗でほとんど見えない。しかも草がたくさんしげる道になってきた。道のはばはとにかくせまく、人がひとりようやく通れるほどじゃ。ジンベはだんだん心細くなってきた。
「ひきかえそう」
ふりむくと、今まで歩いてきたはずの道が、どこにもない。暗くて見えないだけじゃない。そんな道、かげも形もありゃあせん。ありもせん道をひきかえすことはできない。ジンベはこまった顔で前に歩きだした。しかしとんでもないことじゃ。道は同じように細く暗く、不親切にどこまでも続いとった。ジンベはべそをかきながら三日三晩歩いた。昼間も背たけよりも高く草がしげっていてやっぱり暗い。
ようやく道がほの明るくなっていた。ジンベは最後の力をふりしぼるようにしてそちらへ歩いた。一歩歩くたびにからだがぽろっとこわれていく、それほどつかれとったんじゃ。
やぶのむこうがまぶしく光っとった。ジンベは明るい場所へ一歩ふみ入れた。
ジンベはぎょうてんした。それはこの世のものとは思えんようなものばかりじゃ。おそろしくてすぐひきかえそうとしたが、今まで歩いとった草のしげった細い道は、なかった。いやいや、この世界は、草など一本もなかったんじゃあ。
ジンベのゆきついた村は、空のすぐ下まで土地に見えるが、そばによるとそうでもない。かわった形の石ころがころがるはてしない荒野だった。
かぶと虫を大きくしたような形の石や、ましかくの柱のような石、とんがった石やぐるぐるのもの、どうにもややこしくて説明しようのない形の石までころがっとった。ジンベはひとつひとつを近くまでよって見ていた。
「こりゃ、みんなすみや灰になったもんじゃあねえんか・・・」
灰色の荒野をめずらしげに思いながらジンベはあるきだした。
「あわわ、なんじゃこりゃ」
灰の中には犬のほね、それに、たくさんの人のほねもころがっとった。とにかくぞっとするけしきじゃった。
「ここはじごくにちげえねえ。ここからはよう出んと、おらあ気がへんになるぞ」
ところがジンベがおるのは灰色の荒野が地のはてまでつづく平地のどまん中で、出口なんぞ考えなんだ。ジンベは力をふりしぼってひた歩いたんじゃ。
ジンベがべそをかいた。
「ガッカリじゃ。ここはほんにガッカリじゃあ」
ジンベはそれでもガッカリ村の出口をもとめていく日か歩いた。じゃが出口は見つからなんだ。
「ガッカリじゃあ・・・」
そういってとうとう力つきた。ごろごろところがるほねの中に、こうしてジンベもなかまいりしたんじゃと。
ガッカリ村 おわり