町の中央広場をせっせときれいにそうじするおばさんがいました。おしゃれないでたちで、いつも軽やかにはたらいていました。

「あたしがいなけりゃきたなくって、この広場にゃだあれも近よれやしないよ」

この日もたくさんのごみをほうきやちりとりで集めていました。

「まったく、日曜日のあくる日っていうのは、ごみの量が三倍も五倍もあるようだね」

おばさんはそれでもはなうたをうたいながら、うれしそうにちりとりの中いっぱいのごみを白いポリ袋にうつそうとしました。

「おやおや」

なんとも美しく青いカプセルがちりとりの中にあったのです。

「なんだろうね、ずいぶんきれいだけど」

おばさんはそれを手にとってみました。まずそのぷよぷよとした手ざわりにおどろきました。片手だと指の間からこぼれおちそうなので、注意深くふたつのてのひらに乗せ、顔を近づけました。のぞきこむようにそれを見ると、海よりも青い世界がどこまでも続くようで、すいこまれてしまいそうでした。青いぷよぷよのカプセルはぶくぶくと音をたてはじめました。ぶくぶくという音は、しだいに人の話し声にかわっていきました。おばさんは、こんどはそれを耳のそばに近づけます。はっきりと、こんな話し声が聞こえました。

 

「おい、きげんはなおったかい、ジム」

「ぜんぜん」

「いいかげんにきげんをなおせ、なあ・・・」

「トム、やっぱりおれがまんできない」

「気もちはおれも同じだけど、しかたないじゃないか」

 

おばさんは首をかしげました。この青いカプセルはいったいなんなのでしょう。聞こえる会話はだれのものなのでしょう。おばさんはまたなにげなくカプセルをのぞいてみました。こんどはその中にくっきりと人のすがたがうつし出されました。男がふたり。会話はこのふたりのものです。

「北通りなんてそりゃひどいもんさ。たばこのすいがらにあきかん、あきびん、おかしのふくろ・・・。せっかくきれいにしても、そこにつばうをはいていきやがる」

「うん、あそこは特にきたないな」

「いやいや、南通りも西通りもどこもおなじさ。人間たちはちらかしっぱなしのよごしっぱなしさ」

「でも、いつも感心するのは、この中央広場のきれいなことだ。いつきてもごみがおちてないものな・・・。あれまてよ、どうしたんだ、きょうはごみが多いぞ」

「おいおい、きょうは日曜日だよ。ここの名物おばさんの休みの日だ」

「名物おばさん・・・?ああ、あのそうじのおばさん。思い出したよ。おかげでいつもここはきれいなんだ。なあジム」

 

おばさんはそれを聞いてうれしくなりました。でも、きょうは月曜日だし、ここにはもうごみはもうありません。カプセルの男たちに話しかけようとしました。

「もしもうし、聞こえますか」

でも、中のふたりには聞こえないようです。おばさんは、カプセルの中のようすは、きのうの日曜日のものではないかと思いました。

 

「通りのきたないところをかたづけちまおう」

「おそうじニンフ(妖精)のご奉公」

 

おばさんは、男たちが、散らかっているたくさんのごみをひろっているようすを見ました。ポプラ並木が続いているのでそこは北通りです。男たちの背たけは、すてられた赤いコーヒーのかんよりも小さいのです。目をまるくしながらようすを見ると、男たちは汗をたらたらと流し、歯をくいしばり、大きな荷物をひとつひとつくずかごにはこんでいました。その間、ふみつけられそうになったり、車が通るたびにふきとばされそうになったりしました。 

おばさんはくいいるように、そのようすを見ていました。ごみがすっかりかたづいた時、ひとつ大きなためいきをつきました。

おばさんはそれからすぐに役場へ行き、広場に看板を立てるようにお願いしました。

きれいな看板ができあがりました。「ごみはくずかごへ」ということばが書かれていましたが、おばさんはその下にこう書きこみました。

『北通り、南通り、西通りはとくにきれいに。はたらきもののニンフさん〜トムとジム〜にもう少し楽をさせてあげてもいいでしょう』

その看板を見て、だれもが首をかしげる中、トムとジムは、涙を流してよろこんでいたようです。そして、この看板のせいかどうか、通りは確かにきれいになっていきました。

 

月曜日の広場で おわり

 

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